研究概要 |
1.巨大ベシクルの調製に関する成果 溶媒蒸発法など、従来から知られている複数の巨大ベシクル調整方法に関してベシクル形成の制御の良否など、本研究の進展に関して必要な点に関して比較・検討した。このうち最近報告された交流電場を利用した方法(Wick et al.,Chemistry & Biology,3,105(1996))を再現することに成功し,更に交流電場の周波数を変化させて巨大ベシクル形成の過程を追跡する実験系を構築した。また、Lee and Menger法(F.M.Menger et al.,Langmuir,11,3685(1995))により形成させた巨大ベシクルの大量調製に成功した。 2.巨大ベシクルの疎水化多糖類による被覆に関する成果。 疎水化多糖類として、プルランを疎水性のコレステリル基によって部分的に修飾して疎水化したCHPを採用した(K.Akiyoshi et al.,Macromolecules,26,3062(1993))。これを蛍光プローブ修飾したFITC-CHP(E.-C.Kang et al.,J.Bioactive and Compatible Polym.,12,14(1997))を用いて共焦点顕微鏡観察に供した。CHPの疎水部と巨大ベシクル膜の疎水性部との間の会合により巨大ベシクルの内外表面が被覆されることを確認し、界面活性剤(SDS)または膜消化酵素(ホスホリパーゼ)による膜安定性の差を検証した。被覆巨大ベシクル膜はこれらの刺激に対して大きな安定化効果は示さなかったが、高分子であるホスホリパーゼの効果が顕著に抑制されなかったことから、この疎水化多糖類による被覆は固定的なものではなく、結合と解離を繰り返す平衡的結合であることが示唆された。更に、共焦点顕微鏡観察により巨大ベシクル膜断面付近における被覆層の厚さ分布からこの被覆過程が単純なLangmuir型の単一層の吸着ではなく、何重にも重なったBET型等温吸着モデルに従うことがわかった。このBET型等温吸着モデルを仮定することで、各吸着層の平均厚さと積層数が決定され、特に平均厚さは単独の疎水化多糖類が形成する微粒子として知られる大きさとほぼ同程度であることがわかった。
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