末端架橋反応によって直径約1mm程度の円柱状のポリブタジエンゲルを作製し、化学構造の異なる4種の低分子液晶中で膨潤させ、温度を変数として平衡膨潤度を測定するとともに、ゲル中の液晶の相挙動を観察した。調べた全ての液晶に共通して、ゲル中での液晶相-等方相転移温度は約1℃低下することがわかった。ここで興味深いのは、液晶の種類によってゲル膨潤度はかなり異なっており、すなわち液晶の相転移に対する不純物濃度は相当異なっているにも拘わらず、相転移温度の低下度が同程度であることである。ゲル外部にある液晶がゲル内部の液晶相の形成を誘起している可能性が考えられ、次年度にこの問題を解明できる実験を計画している。また、平衡膨潤度については、液晶の種類に拘わらず、等方相の方がネマチック相よりも大きくなるとともに、相転移温度近傍においては興味深い膨潤挙動が観察された。ゲル外部の液晶すなわち純液晶とゲル内部の液晶では相転移温度が異なるため、ゲル外部はネマチック相であるがゲル内部は等方相であるという温度領域が約1℃の範囲で存在するが、この温度領域では平衡膨潤度はほぼ一定に保たれることがわかった。ゲル内外で液晶の相が異なるため、ゲル内部の液晶溶媒の流出入が凍結されている可能性がある。また、液晶相転移温度近傍では、温度変化に対して膨潤度が比較的大きな不連続変化を示した。膨潤溶媒である液晶の相転移に伴って、液晶とポリブタジエン間の熱力学的な親和性が不連続に変化したためと考えられる。
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