本研究では、ブロック共重合体が形成する球状ミクロ相分離構造を基本的構成要素とした、"マクロ結晶"の熱力学的挙動について検討し、高分子材料に代表されるソフトマテリアルが形成する"マクロ結晶"の特徴を明らかにすることを目的とした。今年度は、ブロック共重合体の形成するミクロスフェア構造を化学的に架橋して固定化することで、"マクロ結晶"の基本的構成要素の構造変化を最小限に抑制し、純粋に"マクロ結晶"の熱力学的挙動が研究できるようなモデル系を創製する。来年度はこれを用いて、"マクロ結晶"の近距離秩序(充填格子)、長距離秩序(グレインの大きさ、グレイン間の相関)、相転移現象("マクロ結晶"の融解あるいは近距離秩序の無秩序化過程、一次相転移性)を研究する予定である。 今年度の実験では、SBS(スチレン-ブタジエン-スチレン)トリブロック共重合体を出発試料としてPS(ポリスチレン〉と相溶性のあるホモポリマー(PSあるいはポリフェニレンエーテル)をブレンドさせて系全体の平均組成をPS一rich(PS組成85wt%以上)とすることで、SBSトリブロック共重合体にポリブタジエン(PB)ミクロスフェア構造を形成させ、PBコア粒子内部でのPB鎖の化学架橋による固定化を行なった。小角X線散乱(SAXS)測定を行い、サイズのそろった球状ミクロドメインが形成されているかどうかの判定を行った。その結果、低分子量PSホモポリマーをブレンドした試料では、比較的サイズの一様な球状ミクロドメインが形成されたが、その後、トルエンに再溶解させて分別し、架橋PBミクロスフェアを単離する操作で、完全に溶解せずにゲル化した。原困は、共連続構造が混在したためであり、出発物質として用いたSBSトリブロック共重合体のPB分率が小さすぎたと考えられる。現在、PB分率がもっと大きなSBSトリブロック共重合体を用いた試科で継続検討中である。とりあえず、上述の検討試料でトルエンに再溶解した成分を単離して、3次元"マクロ結晶"を自発的に形成させた。SAXS法、原子間力顕微鏡タッピング・モード観察、透過型電子顕微鏡観察を行い、近距離ならびに長距離秩序性を検討した。
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