昨年度はSBS(スチレン-ブタジエン-スチレン)トリブロック共重合体を出発試料として、ポリブタジエン(PB)球状ミクロ相分離構造を作製し、さらにそのPB鎖を化学架橋してPBミクロスフェア構造を作製した。今年度はこれを用いて、高分子"マクロ結晶"の相転移現象の研究を行った。 1.架橋PBミクロスフェア構造の温度に対する安定性 本実験系が純粋に"マクロ結晶"の熱力学的挙動が研究できるようなモデル系であるためには、"マクロ結晶"の基本的構成要素である架橋PBミクロスフェア構造(おもにサイズ)が温度によって変化しないことが望まれる。このことを確認する実験を温度可変の小角X線散乱(SAXS)測定によって行なった。また、圧力による変化も調べた。今後は圧力印加状態下でSAXS測定によって構造解析を行う。 2.相転移現象("マクロ結晶"の融解あるいは近距離秩序の無秩序化過程、一次相転移性) "マクロ結晶"の温度変化にともなう融解過程を温度可変のSAXS測定により追跡した。SAXSデータをパラクリスタル理論に基づき解析することによって、"マクロ結晶"格子の乱れ因子を決定し、その温度変化が"マクロ結晶"の融解(無秩序化)温度で不連続に変化するかどうかを検討する予定であったが、初期試料で望み通りの高秩序が達成されなかった。そこで、4000気圧までの高圧を印加した。その結果、すでにある程度秩序化している試料はさらに秩序化したが、最初からあまり秩序化していない試料ではさらに秩序化度が良くなることはなかった。今後は圧力印加後の時間依存性を詳細に検討する。
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