複合材料積層板中に形状記憶合金ファイバを埋め込み、その形状記憶効果、あるいは温度変化による力学的特性の変化を利用し、複合材料中の応力分布を変化させ、負荷中の損傷発生を能動的に抑制させること(損傷抑制機能付加複合材料)、あるいは外部の温度変化に適応して自己の力学的特性を変化させる(温度適応型複合材料)材料を作り、その設計手法を構築し、スマート複合材料・構造の有力な一手法として確立することを目的とした。複合材料積層板は、成形温度とは異なる温度下では各層の熱膨張係数の違いにより、熱残留応力が発生する。この熱残留応力が損傷を誘発する場合がある。損傷抑制機能付加複合材料では、形状記憶合金の形状記憶効果を利用してこの熱残留応力を低減し、損傷発生を抑制することを考えた。また、温度適応型複合材料では、使用中の温度変化に適応したより効果的な構造設計が可能な材料を目指した。 まず、損傷抑制機能付加複合材料の作製を行った。GFRPクロスプライ積層板を作製し、その90°層内に繊維方向に垂直に引張の予ひずみを与えた形状記憶合金ファイバを埋め込んだ。形状記憶合金ファイバの予ひずみ及び体積含有率を様々に変化させた積層板を作製した。積層板作製後、形状記憶合金の変態温度以上に温度を上げ、形状記憶効果を発現させる。これにより、90°層に圧縮応力が導入され、引張の熱残留応力が低減されることが考えられた。この積層板の引張試験より、トランスバースクラックの発生ひずみが形状記憶合金埋込により大きくなることがわかり、これにより、損傷抑制機能付加複合材料実現の可能性が示唆された。
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