本年度は研究目標として掲げた「衝撃波管による物理量計測精度の向上」を実現するために、まずレーザーシュリーレン計測系の試験レーザーとして線型0.5mmのものを新たに採用し、それを2つ並行に配置して衝撃波面を計測することで衝撃波速度測定の精度を向上することが可能となった。また光学系の改良を行って、光量が不足しがちな高速の発光現象をより高い時間分解能で行えるようになった。予算の都合上、本来目的としていたCCDを準備することができなかったが、その代替案として高応答性のフォトダイオードによる定点発光履歴測定システムを開発し、衝撃波後方の乱れの有無と実験の再現性の確認、および各実験におけるスペクトルの相対的な強度の規格化が可能となった。この改良された新しい実験設備を用いて、これまでに開発された手法により実験を行い、高エンタルピ希薄流の熱的化学的非平衡現象のモデル化のための実験データベースを現在開発中である。 また実験を行うにつれて新たに、衝撃波前方のプリカーサ領域における電子の生成が、衝撃波背後の非平衡現象に重要な役割を持つことが考えられるようになった。これを明らかにするため、改良型トリプルプローブ法を新たに開発し、プリカーサ領域の電子密度を定量的に測定する手法を確立した。現在、様々な条件下における特性を調べるため実験を継続中である。 数値解析モデルの開発においては、分子動力学計算を行うための基礎的なモジュールの開発とデータベースの準備に留まった。これは各モジュールの計算に多大なメモリと計算時間を必要とするため、開発スケジュールが遅れたためであるが、現在計算機の性能を向上する作業が終了し、今後2原子分子間の衝突をモデル化した計算を開始する予定である。
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