食用アスパラガス(Asparagus officinalis L.)は雌雄異株植物であり、この性分化は性染色体上の性決定遺伝子によって支配されている。この性決定遺伝子が単離されれば、アスパラガスの早期雌雄判別法の確立だけでなく、この遺伝子を他の作物に遺伝子導入して雌雄の形質転換作物を作出することによりF1雑種育成に応用することが可能となり、育種学上非常に重要な遺伝子となり得る。 平成11年度は食用アスパラガスの性決定遺伝子の単離の第1歩として、λファージベクターを用いた食用アスパラガスのゲノミックライブラリーを作成した。平成12年度は食用アスパラガスより単離された花器官形成遺伝子(GLOBOSA-like遺伝子)、リボソームRNA遺伝子、転写伸長因子の遺伝子(eEF1A)をプローブに用いてスクリーニングを行った。その結果、それぞれの遺伝子についてポジティブクローンが得られ、このライブラリーが遺伝子のスクリーニングに有効であることが分かった。 また性決定遺伝子を単離する際にmap-based cloning法に利用するためには、BACベクターを用いたゲノミックライブラリーを作成する必要がある。本年度は食用アスパラガスの播種後3〜4週間の芽生えから核を単離し、高分子量DNAを含むゲルプラグを作製した。非消化及びHindIII完全消化のDNAをパルスフィールド電気泳動し、量と質ともに条件を満たしていることを確認した。150kbほどの断片が多く含まれるようなHindIIIの部分消化条件を検討したところ、2〜8Units/ulで37℃1時間処理が適当だと考えられた。この条件でBACベクターへのクローニングを行い、数十のクローンを得た。各クローンのインサートサイズを確認したところ、平均で30-40kbだった。
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