研究概要 |
エネルギー合成にかかわる代謝系、特にチトクロム系とオルタナティブ系の2つの呼吸経路及びエタノール発酵系に着目して、イネの生殖生長期におけるこれらの代謝系の遺伝子発現を解析した。チトクロム系呼吸経路の遺伝子として、COX1,COX2,COX5b,COX5c,COX6b,ATP1,ATP2を用いた。オルタナティブ系呼吸経路の遺伝子としてAOX1aを、エタノール発酵系の遺伝子としてADH1,PDC1,ALDH2を用いた。様々な器官より抽出した全RNAを用い、ノーザン解析を行ったところ、呼吸経路の遺伝子に加えてエタノール発酵系の遺伝子も、小胞子期の穎花の多い幼穂にて発現量が多いことが明らかとなった。このことは生殖成長期には好気的な環境下であってもエタノール発酵が活性化されていることを示しており、呼吸経路に加えてエタノール発酵系がその時期のエネルギー合成や様々な代謝産物の生合成を担っていることが示唆された。また、生殖生長期(小胞子初期)のイネの低温処理(15゜C)を、冷水深水灌漑にて10日間以上行った。処理前および処理後のイネより幼穂、葉身、葉鞘、根などの器官をサンプリングし、様々なエネルギー代謝系の遺伝子発現の組織特異性をNorthern hybridizationの手法で解析する予定であったが、処理条件が厳しく、花芽器官の形態異常が生じたために、供試材料として用いることができなかった。来年度は処理温度を17-19℃にし、再度低温処理を施し、低温処理によって発現様式が変化するエネルギー代謝系遺伝子が存在するかどうかを調査する。
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