サツマイモ野生種の自家不和合性は胞子体型であり、単一遺伝子座の複対立遺伝子(S遺伝子)により支配されている。サツマイモ野生種のS遺伝子座を単離するために、本年度は、S遺伝子座近傍(1.0cM)に座乗するSSP遺伝子からの染色体歩行を行うとともに、単離されたSSP遺伝子のゲノミッククローンの解析を行った。また、サツマイモ野生種の雌蕊で発現している遺伝子のESTカタログの作製を行い、それらの発現を調査した。 サツマイモ野生種のS_1S_1(H45-3)系統、S_<10>S_<10>(H77-2)系統の葉よりゲノミックDNAを調整し、λベクターを用いゲノミックライブラリーを作製した。SSP_<10>cDNAをプローブに用い、両ゲノミックライブラリーをスクリーニングして、SSP_1およびSSP_<10>ゲノミッククローンを得た。これらの構造解析を行うとともに、SSP遺伝子のコード領域周辺をサブクローニングして塩基配列を決定した。得られたクローンはいずれも約1.6Kbpの5'上流領域を含んでいたが、SSP_1とSSP_<10>で共通な領域は翻訳開始点上流の約370bpであった。従って、この領域が雌蕊特異的な発現制御に関与していると推定された。また、得られたゲノミッククローンの両末端をプローブに用い、更にゲノミックライブラリーのスクリーニングを行い、染色体歩行を進めている。 また、サツマイモ野生種のS_1S_1系統の開花前日の柱頭より、cDNAライブラリーを作製しランダムにクローンを選抜して、524クローンのESTカタログを作製した。これらのクローンの発現パターンをドットブロット分析により行ったところ、ポリガラクチュロナーゼ遺伝子と相同なクローンが雌蕊で強く発現していることが示唆された。
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