サツマイモ野生種(Ipomoea trifida)は胞子体型自家不和合性を示し、その遺伝様式は単一遺伝子座の複対立遺伝子系により説明されるが、既知の胞子体型自家不和合性種あるアブラナ科とは異なった遺伝子が関与していることが想定されている。そこで本研究では、サツマイモ野生種の自家不和合性遺伝子(S遺伝子)を単離することを目的として染色体歩行を行った。 染色体歩行は、既に同定されていたSSP(S-locus-linked stigma protein : 1.33cM)、及び近年同定された、AAM-68(OcM)、AF-41(0.08cM)、AAM-12(0.17cM)をプローブに用い、λファージで作成したサツマイモ野生種(H45-3系統、S1S1)のゲノミックライブラリーをスクリーニングした。得られたクローンに関して、そのインサートの末端領域の塩基配列を決定してプライマーを作成し、PCR増幅により末端部分のプローブを調製して染色体歩行を行った。 これまでに各マーカー周辺領域の約15Kbp、約50Kbp、約30Kbp、約33Kbpに相当するコンティグを作成し、それぞれ制限酵素地図を作製した。この領域に存在するORFを確認するために、これらコンティグに対し成熟期の柱頭と葯のmRNAを基に合成したcDNAをプローブとしてハイブリダイズしたサザン分析の結果、当該領域に少なくとも9個のORFが推定された。これらのうちの1つはchalcone synthaseであり、成熟期の葯で高度に発現していることをDNAマイクロアレイにより確認した。詳細な解析は今後順次行ってゆく予定である。
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