研究課題
本研究では、植物における「斑入り」や「縞」などのキメラ性葉緑素突然変異体における形質発現について調ベ、その原因遺伝子を分子遺伝学的に明らかにすることを主な目的としている。これらの原因遺伝子は、葉緑体の分化やオルガネラの形成に重要な役割を果たしている可能性が高いので、同定した遺伝子の発現制御機構について調ベ、遺伝子操作等による作物の生産性向上について検討する。平成11年度は、オオムギの縞系統wst-3に関する以下の知見を得た。まず、細胞微細構造を電子顕微鏡により観察し、wst-3変異体では正常と異常の葉緑体が一つの細胞内に共存すること(chloroplast-autonomous)、および、ミトコンドリアの形態には際だった変化が見られないことを明らかにした。wst-3系統では、約10%の個体がアルビノとなって致死に至るが、このアルビノの出現が母性遺伝することを交雑検定によって確認した。また、この系統の発芽は、光条件下では野生型のオオムギと比べて著しく低下することが明らかとなり、葉緑体分化との関係が示唆された。さらに、新たな斑入りに関わる遺伝子を単離する目的で、シロイヌナズナをアグロバクテリウムとvacuum infiltration方によって形質転換したT-DNA挿入突然変異系統を多数作出し、これらのスクリーニングを行った。その結果、T-DNAの挿入と遺伝子の欠損によって斑入りが起きたと考えられる系統、すなわち選択マーカーであるカナマイシン耐性と斑入り形質が完全に連鎖する系統が1系統得られた。顕微鏡観察からは、この系統F204の葉緑体の分化はchloroplast-autonomousであることが明らかとなった。カナマイシン耐性の分離からはT-DNAの挿入は1つもしくは一ヶ所であると予想されたが、この点について今年度は詳細な解析を行った。
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