染色体歩行によって花粉S遺伝子を同定することを目指し、アーモンドの突然変異体「Jeffries」の原品種「Nonpareil」(S^cS^d)、そしてナシの突然変異体「おさ二十世紀」の原品種「二十世紀」(S^2S^4)を用い、コスミドライブラリーを構築した。これまでにアーモンドについては、11のクローンによってS^c対立遺伝子領域を200kbp以上にわたってカバーするコスミドコンティグを構築した。コスミドクローンの末端や内部の断片をプローブとして、ゲノミックサザンブロット解析を行った。その結果、Sc-RNase遺伝子の近傍約70kbpの領域は比較的Sc対立遺伝子に特異的な配列に富むのに対し、それ以上Sc-RNase遺伝子から離れた領域では、比較的S対立遺伝子間で配列が保存されている傾向が示された。アブラナ科のS遺伝子座の解析結果などから雌ずいS遺伝子と花粉S遺伝子の近傍は比較的S対立遺伝子に特異的な配列に富む傾向があると考えられることから、アーモンドの花粉Sc遺伝子はSc-RNase遺伝子の近傍約70kbpの領域に存在する可能性が高いと考えられた。以上の結果については論文として投稿し、Genetics誌に受理された。 ナシについては、現在までにS4-RNase遺伝子を含む100kbp以上のコンティグを構築した。コスミドクローンの末端や内部の断片を用いてゲノミックサザンブロット解析を行った結果、「おさ二十世紀」のS^4対立遺伝子領域の欠失範囲はコスミドコンティグのカバーする範囲(約100kbp)よりも大きいことが示された。「おさ二十世紀」はS^4-RNase遺伝子は欠失しているが花粉S^4遺伝子の機能は正常であることから、この結果はナシのS4対立遺伝子領域アーモンドSc対立遺伝子領域より大きく、ナシ花粉S^4遺伝子はコスミドコンティグでカバーされている領域内には存在しないことを示している。
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