本研究は、イネの干ばつ抵抗性の品種・施肥レベル間差異を、葉温と土壌水分の非破壊計測から評価することを目標としている。圃場に干ばつ抵抗性の異なる5品種のイネを栽培し、さらに施肥レベルと堆肥の量の異なる区を設け、ビニルハウス内で水ストレス処理を与えた。そして、干ばつ抵抗性の品種間差異ならびに、施肥レベル間差異、堆肥間差異について、熱電対による葉気温差の連続計測と深さ別土壌水分含量の計測から検討した。土壌水分含量はTDR土壌水分計測法により、区に埋めたチューブにプローブを挿入して、深さ60cmまで10cm毎に深さ別土壌水分含量を計測した。葉温や気象データは、データロガーからノートパソコンに転送して解析した。 葉温を環境条件で補正して指数化し、作物水ストレス指数を求めるためのモデル葉の特性を明らかにするため、湿潤モデル葉からの蒸発量を計測し、気象データから理論式により求めた理論値と比較した。両者は近い値を示し、モデル葉の妥当性が確認された。干ばつ抵抗性品種や堆肥ならびに少肥条件では、乾燥条件下でも乾物生産が高く保たれたが、モデル葉により求めた作物水ストレス指数が低く保たれ、水ストレスが低いことが明らかとなった。また、これらの条件では、地表から深層までの土壌水分含量の低下が大きかったことから、蒸発散量が高く保たれていることが明らかとなった。SPAD値においても、乾燥条件下において乾物生産が高く保たれた干ばつ抵抗性品種や牛糞堆肥では高く、収量の低かった多肥では低い傾向がみられ、葉色と生育との対応がみられた。 以上より、イネの干ばつ抵抗性の品種間差異と、堆肥ならびに施肥レベルによる差異を、葉温と深さ別土壌水分含量の非破壊経時計測により、地上部と地下部の両面から評価することができ、生育の高く保たれた品種や施肥条件では、乾燥条件下においても吸水により蒸散を高く保っていることが明らかとなった。
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