開学時からの無代かき栽培やコーティング肥料を用いた苗箱全量施肥法を継続した結果、収量や食味を落とすことなく、流出する水質の改善に効果があることを再確認した。さらに、コアサンプル法を用いて根を採取し、深さ30cmまでの土層に分布する根と地上部の発達を比較したところ、慣行区(代かきを行い速効性化学肥料を使用した水田)では地上部優先の発達を示すのに対して、育苗箱全量施肥と無代かき栽培のイネでは地下部への乾物分配割合が高く、地上部と根の発達がバランス良く進行することが明らかとなった。また、そのイネでは茎断面からの総出液量、茎1本当たりの出液量が多いこと、そしてそれが根量の多さに起因していることを見い出した。 一方、除草剤を用いない稲作法として注目されている米ぬか散布やヘアリーベッチ鍬き込み方を取り入れた水田、およびポット栽培の水稲についても根系採取を行い、画像解析法によって定量的に調査した。水田では米ぬか投入によりかなりの除草効果は得られたが、散布ムラのためイネの生育は水田の位置ごとにかなりの変異が認められた。ポット栽培では、十分な抑草効果を示すとされる200kg/10aの表面施用により根系発達が阻害され、それが地上部生育にも悪影響をもたらしていた。水田では(抑草効果の高いとされる)ヘアリーベッチを生のまま鍬き込む方法を試みたものの、効果は不十分であった。ポット栽培では、生鍬き込みと枯らされてから鍬き込む方法を比較した。いずれも根の平均直径が対照区よりも大きく、鍬き込みによって根が太くなることを見い出した。また、その傾向は枯らせてから鍬き込む方が顕著であり、肥料効果が高いことを窺わせた。総根長も枯らせてから鍬き込む場合には有意に長くなったが、生鍬き込みでは対照区よりも短くなり、ヘアリーベッチから放出されたアレロパシー物質がイネの、特に細根の発達に悪影響を及ぼした可能性も考えられる。
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