既に本学水田で実施した調査から、無代かき育苗箱全量施肥栽培では慣行栽培と比較して草丈が慣行区よりも低く推移し初期の株当り茎数もかなり劣るものの、有効茎歩合が高く最終的には穂数がほとんど差が無かったこと、収量は若干劣るが食味は同等であることが明らかとなっているが、土壌条件や肥料条件の影響が最初に現れると考えられる根の形態については全く明らかにされていない。そこで、施肥法2通り(即効性肥料を慣行法に基づいて分施、コーティング尿素による育苗箱全量施肥)と代かきの有無とを組み合わせた4つの区において栽培したイネ(Oryza sativa L.)の根系を穂孕期と登熟期の2回採取し、施肥条件と代かき処理が根系発達におよぼす影響について調査した。 地上部生育に対しては肥料の違いの効果が大きかったが、根系発達では逆に代かきの効果の方が顕著であった。代かきとともに施肥も慣行に従って行った場合、根系が株直下と株間の全域に広く分布するのに対して、無代かき栽培では株直下および上層部に偏在する傾向を認めた。また、無代かきと育苗箱全量施肥を組み合わせた場合、最も深い層を除いて優れた根系発達を示すことを見い出した。さらに両処理を組み合わせた場合、総体的な根系発達に優れるとともに、直径も全体的に大きくなるということが明らかとなった。 有機農産物の認定基準が2001年4月から変更されることと有機栽培米への需要の伸びが予想されることを考慮し、今後は無代かき栽培あるいは不耕起栽培を除草剤や化学合成肥料を一切用いない有機栽培とを組み合わせた栽培試験を実施し、イネの収量性や根系発達様式などを解明したいと考えている。
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