研究概要 |
セイヨウナシ果実に含まれるデンプンが持つ生理学的意義を解明するために,平成11年度は,収穫後のデンプン含量の消長について検討を行った。その結果,′ラ・フランス′果実では,20℃での追熟中にデンプンがエチレンの生成に先駆けて急激に分解すること,また,低温処理中においてもデンプンの分解はすみやかに進行することが判明した。そこで,本年度は,低温処理中のデンプンの消長が果実の追熟におよぼす影響を検討した。 実験には,適期に採取した′ラ・フランス′果実を供試した。収穫した果実は,ただちに1℃,5℃および20℃の恒温室に移した。20℃区では30日間,また,1℃区と5℃区では20日間,2日ごとに果実内エチレン濃度,果肉硬度およびデンプン含量を測定した。さらに,1℃区と5℃区については,2日ごとに3果ずつ20℃に移し追熟を行い,2週間後に果肉硬度を測定した。 その結果,果実内エチレン濃度は,20℃区と5℃区では10日目から,また,1℃区では12日目から増加し始めた。果肉硬度は,20℃区において急激に低下した。これに対して,1℃区と5℃区では,実験期間を通して,ほとんど変化しなかった。デンプン含量は,20℃区において,収穫直後から8日目までに急激に低下した。他方,1℃区と5℃区では,デンプンの分解速度は20℃区と比較して遅くなるものの,比較的すみやかに分解が進み,20日後にはほとんどが消失した。1℃区と5℃区から20℃に移した果実の2週間後の果肉硬度は,両区ともに,低温処理を8日間以上施した場合,果肉硬度が約5Nと一定の値になった。 以上の結果から,′ラ・フランス′では,8日間以上の低温処理日数が有効であることが判明した。また,この低温処理の8日間でデンプン含量が両区ともに収穫時の1/3になることから,低温処理中のデンプンの分解が低温処理の有効性にかかわっていることが示唆された。
|