研究概要 |
自然公園の空間的特性を考慮し,歩道における肢体不自由者の利用に焦点を当てて,利用を阻害する要因を明らかにした。得られた知見を以下に示す。 1.「自然公園の整備基準」と「都市公園における肢体不自由者に対応した整備基準」、さらには「アメリカの自然公園における肢体不自由者に対応した整備基準」を文献及び現地調査からとりまとめた。その結果、整備する対象の対象に応じて段階的な整備が可能となるように3段階の基準(肢体不自由者が一人で利用可能,介助者を伴って利用可能,利用困難)を採用し、自然公園での肢体不自由者に対応した3段階の整備基準を提案した。提案した整備基準の留意項目は以下の14項目である。[1]幅員、[2]縦断勾配、[3]横断勾配、[4]路面、[5]排水施設、[6]路線距離、[7]段差、[8]手すり、[9]平坦部分の確保、[10]立上がり、[11]車止め、[12]防護柵、[13]縁石等のすりつけ、[14]その他(線形) 2.富士箱根伊豆国立公園湖尻集団施設地区内の歩道22路線(路線距離の合計5,779m)を、提案した整備基準で現地調査した。調査の結果,現況における湖尻集団施設地区内の歩道において,肢体不自由者が利用可能な路線は2路線,総延長にして利用可能な路線の割合は12.6%となっていた。肢体不自由者の利用を困難にしている留意項目は,[2]縦断勾配,[4]路面,[5]排水施設,[10]立ち上がり等であった。これまでの調査分析から得た知見に基づき,肢体不自由者利用の可能性を広げる観点から,(1)比較的容易に改善できる阻害要因(排水施設,段差,立上がり,危険個所,その他の障害物)を除去する,(2)全路線は利用できないが,部分的に利用可能な路線部分を利用する,これら2点に留意して整備を行う必要がある。
|