水チャンネルタンパク質の精製:セイヨウナシ果実から液胞膜を単離し、そのタンパク質を二次元電気泳動した結果、水チャンネルタンパク質の複数のスポットが検出され、アイソフォームの存在が示唆された。また、キュウリの原形質膜を水性二層法で単離することに成功したが、膜タンパク質に占める水チャンネルの割合はそれほど高くなかった。このため現在は、水チャンネルを界面活性剤や有機溶媒処理により膜から選択的に可溶化し、精製している。精製が進めば、二次元電気泳動によるアイソフォームの確認やアミノ酸配列の決定を行い、抗体の作製を行う。 遺伝子の単離:セイヨウナシ果実のcDNAライブラリーから液胞膜型水チャンネルの全長cDNAクローンを単離し、塩基配列を決定した。その結果、そのクローンはγ-TIP型の液胞膜水チャンネルであることが確認された。また、原形質膜型水チャンネルは、PIP1型の全長cDNAクローンを二種類、PIP2型の全長cDNAクローンを二種類、合計四種類の全長cDNAクローンを単離することに成功した。これら四種類の遺伝子は、果実生長過程での発現や器官別の発現が異なることが考えられ、現在ノーザンブロット解析によりそれぞれのmRNAの発現量を調べている。 その他(タンバク質レベルでの発現解析):セイヨウナシ果実の液胞膜水チャンネルタンパク質の組織別発現をTissue Print Immunoblot法で見たところ、他の液胞膜タンパク質に比べ果肉組織で発現量が多いことが明らかとなった。また、ブドウの果実生長における液胞膜水チャンネルタンパク質の発現を見たところ、セイヨウナシ果実の場合と異なり、果実の生長期間を通じて発現が高かった。この結果から、液胞膜の水チャンネルは果実肥大以外にも機能し、果実細胞の水分調節などに機能している可能性が考えられ、今後これらの点についても解析を行いたい。
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