研究概要 |
染色体工学的育種技術を利用した低温耐性レモンの育成 ユズ四倍体を種子親としてマイヤーレモンを交配した.その結果,果実重は放任受粉区と比較して半分程度となったが,40%の着果率であった.1果あたりの種子数は11個であり,放任受粉区とほとんど変わらず,84.6%の高い完全種子形成率であった.それらの実生を育成し,フローサイトメトリーにより倍数性を解析したところ,四倍体の珠心胚実生に混じって5個体の三倍体が得られた,RAPD法により雑種性が確認され,ガスクロマトグラフィーにより不飽和脂肪酸含量を調査した結果,系統間で差異が認められ,トリエン脂肪酸(18:3)含量が高いものも得られた.これらの三倍体雑種実生は,レモンの種なし化と耐寒性の向上が期待された. 遺伝子工学的育種技術を利用した低温耐性カンキツの育成 充分な生長が認められた3個体のFAD3形質転換体と対照区の不飽和脂肪酸含量を調査した.すべての形質転換体でトリエン脂肪酸(18:3)含量の増加が認められた.特に,形質転換体No.7-2は,リノール酸(18:2)の有意な減少が示され,トリエン脂肪酸は対照区より約10mol%の増加が認められ,48mol%となった.これらの個体を低温にさらしたところ対照区よりも黄化や落葉等の現象が抑えられた.以上のように,不飽和脂肪酸含量の増加が認められたFAD3形質転換体は低温耐性の向上が確認された.さらに,これらの低温耐性能力を詳細に検討する必要がある.
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