シリンゴライドは植物病原細菌Pseudomonas syringaeから単離された非病原性遺伝子avrDの産物により生成され、抵抗性遺伝子Rpg4を持つダイズ品種に対して特異的に抵抗反応(過敏感細胞死)を誘導するエリシターである。このシリンゴライドと結合するダイズの蛋白はチオールプロテアーゼと相同性が認められているが、既知のシグナル伝達に関わるような領域がなくその機能は明らかでない。また、シリンゴライドによる細胞死にどのような遺伝子の発現が関わっているのかも明らかでない。本研究ではシリンゴライドがどのような分子機構で抵抗反応発現を誘導するのかについて解析を行っている。 昨年度、シリンゴライドによるダイズ培養細胞の過敏感細胞死がRNA合成阻害剤や蛋白合成阻害剤により抑制されることがわかり、シリンゴライドによる細胞死の誘導に際し、新たなmRNAや蛋白の合成が起こる可能性が示唆された。そこで本年度はシリンゴライド処理したダイズ培養細胞から経時的にmRNAを抽出し、簡易ディファレンシャル・ディスプレイ法により発現に差異の認められるcDNAを単離した。それらのcDNAをプローブとしてノーザン解析を行った結果、シリンゴライド処理1-3時間後に発現量の増加するいくつかのクローンが得られた。これらクローンの塩基配列を決定し、ホモロジー検索を行ったところ、機能未知のダイズESTの他、転写因子やプロテインキナーゼと類似したものが存在した。今後、これらの遺伝子が細胞死誘導にどのように関わっているかについて解析を進めたい。
|