研究概要 |
植物ホルモン型除草剤の1つであるquincloracは、その薬剤に感受性である植物に処理されると、大量のエチレンが生成されることが知られており、そのエチレン生合成系が殺草作用と密接に関係している可能性が高いことが知られている。近年、我々は、この薬剤に感受性を示すイネ科植物では、その現象は光照射下で特異的に発現する可能性があることを初めて見出し、さらに、光照射時に生成された多量のエチレンやシアンが葉部でのクロロシスの原因となっている可能性が高いことを報告した(Sunohara,Y.and H.Matsumoto,1997)。これらの知見をふまえ、本年度では、そのエチレン誘導に関与している他の環境因子を調べることを目的とし、その光関与のエチレン生成に及ぼす温度の影響について検討した。その結果、薬剤処理後の温度だけでなく薬剤処理前の生育温度もquincloracによる光関与のニチレン生成量に大きく影響することが示された。さらに、薬剤処理後に温度を低下(30℃から20℃)させた場合、quincloracによる光誘導のエチレン生成は、積算温度に依存した量的な減少とクロロシスの抑制が見られた。また、光照射下で、薬剤処理中に温度を上昇(20℃から30℃)させた場合には、積算温度から推定される値以上の急激なエチレン量の増大と著しいクロロシスが起こった。このことから、光照射下での急激な温度上昇は、quincloracによって誘導されるエチレン生合成系酵素量自体の増加を引き起こす可能性が示唆された。また、光照射下でのエチレン生成量とクロロシスとの間には、高い正の相関関係が認められた。以上の結果から、quincloracの光誘導のエチレン生合成とクロロシスには、温度が大きく影響していることが示された。このことは、薬剤処理時の温度(気温)条件を考慮することによるquincloracの低薬量化の可能性を示唆している。
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