研究概要 |
植物病原性糸状菌におけるダイカルボキシイミド耐性のメカニズムを明らかにするため,ヒスチジンキナーゼ情報伝達系に関与する遺伝子群(hisK,MAPKKK,MAPKK,MAPK)のうち,hisKならびMAPK遺伝子のクローニングを試みた。供試菌としては,Botrytis cinerea,Bipoaris maydisおよびNeurospora crassaを用いた。 Saccharomyces cerevisiaeなどで明かとなっているこれら遺伝子の推定アミノ酸配列を基に,PCRプライマーを設計,各供試菌株よりこれらのPCRプライマーを用いて,遺伝子の増幅を試みた。その結果,hisK遺伝子について,Bipolaris maydisでは3種類のものが,Neurospora crassaでは既知のhisK遺伝子(nik-1)の他,新たな1種類が増幅された。Botrytis cinereaではhisKと相同性のある遺伝子配列は得られなかった。MAPKについては,すべての供試菌で,相同性のある遺伝子が得られた。 次に,得られたPCR産物を用い,ゲノミックライブラリーをスクリーニングし,各遺伝子の全長を含むクローンの探索を行った。現在,これらクローンの塩基配列を解析し,遺伝子構造を明らかにしている。また,得られたPCR産物を用いて,各供試菌の野生型株の遺伝子破壊実験を行い,遺伝子破壊株と既知突然変異株との表現型比較ならびに,交配試験による,突然変異遺伝子の同定をも試みている。
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