Alternaria属菌には宿主特異的な病原性の決定因子として、宿主特異的毒素を生産する7種の病原菌が存在する。これら病原菌は突然変異(毒素生産遺伝子の獲得)により土着の腐生性A.alternataから成立すると考えられている。そこで本研究では、毒素生産菌の一種タバコ赤星病菌について個体群構造を解析し、本菌の成立機構について検討を行なった。平成11年度に実施した研究としては、当初の計画の通り、リボソームRNA遺伝子(rDNA)のRFLP分析を行なった。供試菌としては日本各地の9つのタバコ圃場から採集したタバコ赤星病菌89菌株を用いた。これら菌株の全DNAを制限酵素XbaIにより切断し、毒素生産菌の一種ナシ黒斑病菌(A.alternata Japanese pear pathotype)から単離したrDNAクローンAlt1をプローブとしてハイブリダイゼーションを行なった。その結果、これら菌株からは多様なrDNAの多型が検出された。従って、rDNAのRFLP分析が本菌の個体群構造の解析に有効なことが示唆された。現在、これら多型の頻度を圃場間で比較し、本菌の個体群構造の地理的隔離について検討を行なっている。また、本菌成立機構をより直接的に検討するために、同一圃場から分離されたナシ黒斑病菌と腐生性A.alternataについても同様のrDNAのRFLP分析を行なった。その結果、低頻度ながらナシ黒斑病菌の集団中に腐生性A.alternataと同一のrDNA多型を示す菌株が見い出された。現在、これら病原菌と腐生菌の類縁関係について、DNAフィンガープリント分析により、さらに詳細な解析を進めている。
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