水田生態系に特徴的な逐次還元過程を担う細菌群集を明らかにするために、リン脂質脂肪酸組織成による化学分類学的手法、16SrDNAの塩基配列の違いに基づく系統分類学的手法{PCR-DGGE(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis)法}を適用した。 石英砂に、安城水田土壌作土5%、稲ワラ粉末0.4%(C換算)・塩安0.08%(N換算)、各種還元剤として硝酸カリウム(脱窒系)、二酸化マンガン(Mn還元系)、水酸化鉄(鉄還元系)、硫酸アンモニウム(硫酸還元系)、を加え、湛水し、暗所25℃で静置培養した。還元剤の代わりにメタン生成の特異的阻害剤であるBESを添加した系(発酵系)、および硫酸還元の阻害剤であるNa_2MoO_4を添加した系(メタン生成系)も作成した。 各還元系のEhは脱窒系、硫酸還元系は報告値の範囲内、Mnおよび鉄還元系はやや低い値、発酵系およびメタン生成系は報告値よりやや高い値を示し、モデル還元系の改良の必要性があった。培養終了時にリン脂質脂肪酸およびDNAを抽出し、脂肪酸組成の分析およびPCR-DGGEを行った。いずれの還元系においても16:0が30%前後で最優占の脂肪酸で、ai15:0、i16:0、il5:0、18:1w9、18:1w7などが主要脂肪酸であり、i)脱窒系、ii)Mnおよび鉄還元系、iii)硫酸還元系、メタン生成系、発酵系の3つのクラスターが認められたが、各還元系に特徴的な脂肪酸組成を同定するには至らなかった。DGGE解析では、各還元系に共通するバンドも多く認められたが、還元系により多少バンドパターンが異なっていた。次年度は、各還元系を改良し、各還元系に特徴的な生化学反応から各系の妥当性を検証した後、リン脂質脂肪酸分析、PCR-DGGEを行い、各還元系に特徴的な微生物群集のさらなる解析を行う予定である。
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