研究概要 |
本年度は以下のような成果を得た。 1.アルミニウム集積植物であるソバを用いて、根によるAlの吸収形態と根から地上部への輸送形態について検討を行った。まず、根によるAlの吸収形態を明らかにするために、50μMのAlCl_3と異なる比率(1:1,1:2,1:3)のAl-シュウ酸錯体を根に4時間吸収させ、導管液中のAl濃度を測定した。その結果、AlCl_3の形態で与えた場合の導管液中のAl濃度はいずれのAl-シュウ酸錯体で与えた場合の5倍以上であった。このことは根によるAlの吸収形態はAl-シュウ酸錯体ではなく、イオン形態のAlであることを示している。また、根によるAlCl_3の吸収速度を検討したところ、Al処理開始1時間後の導管液中のAl濃度が外液の4倍、2時間以降は外液の10倍近くであった。さらに根によるAlCl_3の吸収は代謝阻害剤のヒドロキシアミンによって阻害されず、ランタンによって著しく阻害された。根細胞中のAlの形態は1:3のAl-シュウ酸錯体と同定されているされていることから、アルミニウムイオンが外液と根の間の濃度勾配によって、受動的に膜通過されると推察される。また^<27>Al-NMRを用いて、導管液中のAlの形態を同定したところ、Al-クエン酸であることを明らかにした。導管液中の主な有機酸はクエン酸であった。これらのことはAlが導管ヘレリースされる際、Al-シュウ酸(1:3)からAl-クエン酸への変換が起こったことを示唆している. 2.ライムギとコムギの耐性品種を用いてアルミニウムによる有機酸の分泌パターンを比較した.コムギの根からのリンゴ酸の分泌はアルミニウム処理直後に起きるのに対し,ライムギではアルミニウム処理から有機酸(クエン酸とリンゴ酸)の分泌まで数時間の誘導期間がいる。また有機酸合成関連酵素の活性を測定したところ,コムギではアルミニウムによる活性変動が見られなかったが,ライ麦ではクエン酸合成酵素の活性が30%増加した.これらの事はコムギとライ麦ではアルミニウムによる有機酸の分泌にいたるまでの機構が異なっている可能性を示唆している.
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