研究概要 |
高等植物の耐塩性及び耐乾燥性において、細胞レベルでは、細胞質内カリウムとナトリウムの比を高く維持する上で、両イオンの原形質膜透過の制御が、また、個体レベルでは、植物体内の水分量の維持ならびにカリウムとナトリウムの根からの吸収を考える上で、気孔を介した水の蒸散の制御が極めて重要である。これらの制御は、特に、原形質膜にある種々のイオンチャネル(カリウムチャネル、アニオンチャネル)によって制御されていることが示唆されている。本申請研究では、タバコ培養細胞およびシロイヌナズナ孔辺細胞を材料として用い、以下の研究成果を得た。 1)これまで、浸透圧調節物質として考えられてきたプロリンは、塩ストレス下の細胞内において、浸透圧調節物質、または、窒素源として働くのではなく、カリウムとナトリウムのバランスが崩れた細胞内での酵素活性の維持に働いている可能性を強く示唆する結果を得た(Soil Science And Plant Nutrition,2000)。また、細胞内のカリウムとナトリウムのバランスが改善され、生長できる細胞では、プロリン含有量が減少する結果も得た(投稿中)。さらに、細胞質内のプロリンは、耐塩性に深く関与した原形質膜カリウムチャネルの活性を抑制する結果を得た(投稿中)。 2)塩ストレスまたは乾燥ストレス下において、植物は、気孔を閉口し、水の蒸散を抑制する。この気孔の閉口は、孔辺細胞原形質膜にあるアニオンチャネルのABAによる活性化によって起きることが知られている。本研究では、このチャネルの活性化に細胞内カルシウムの上昇が関与していることを明らかにすると共に、このカルシウムの上昇が、キナーゼを介して、チャネルの活性化をもたらすことを明らかにした(Plant Cell,1999)。
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