研究概要 |
1.感染能力のあるファージの取得 フルンケル症患者の感染巣より得られたPVL保有株32株のうち1株から、いくつかのPVL陰性の臨床分離株に溶原化しPVL産生株へと変換するファージを得、φSLTと命名した。φSLTは約100×50nmの長頭型頭部と長さ約400nmの尾部からなり、cosを持つ約44kbの二本鎖DNAゲノムを有した。これまでに塩基配列を決定した領域では、PVL遺伝子およびattPサイト周辺等、部分的にφPVLと相同な領域が見られるが、その他の領域はφPVLとは異なっていた。以上の結果、PVL遺伝子は複数のファージ上に存在し、水平伝播される事が示唆された。現在さらに解析を進めている。 2.P83プロファージの解析 プロファージ、φPV83-proの45,634bpの全塩基配列を決定し、現在その解析と確認の作業を行なっている。これまでに2種類の新規のISのトランスポゼースを含む64のORFが見いだされた。PVL型クラスターはattサイト近傍、lytの下流に位置していた。φPV83-proのcos及びmorphogenesis領域を含む約55%の領域はφPVLとほぼ一致していたが、φ11ファージのattやintを持つなど他のファージとキメラ構造をとっていた。 3.ISの解析 φPV83-pro中にIS30ファミリーの特徴を持つISSA1、IS1272と高い相同性を有するISSA2を見いだした。 現在、転移能を証明する系を模索中である。 4.LukF,LukF-PV成分の機能領域の解析 LukF単量体とαーToxinの7量体の立体構造の比較から、LukFのTrp^<177>Arg^<198>が血球膜上のホスファチジルコリンとの結合及びγ-ヘモリジン活性に重要であること、赤血球への結合にはこれに加えてTyr^<72>とArg^<203>が赤血球膜の未知のレセプターへの結合に必要であることを明らかにした。
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