研究概要 |
1.PVL変換ファージの多様性 φSLTと名付けたPVL遺伝子を保有する新規ファージを取得し、PVLのファージ変換を証明した。さらにSLTゲノムの全塩基配列を決定し、すでに明らかにしたφPVL及びφPV83-proのゲノムとの比較を行った。φSLTは10bpの3'突出型cosを有し、62個のORFをコードする、42,941bpからなるゲノムを有していた。φPVLとφSLTでは、PVL及びatt周辺約6.4kbのみが共通の配列であり、それ以外の領域は全く異なっていた。一方、PVLのバリアントであるP83株のlukM-lukF-PVクラスター遺伝子を有するφPV83-proのゲノムは、φ11とφPVLの及び他のファージの配列からなっており、このうちcos及びmorphogenesis領域を含む約55%の部分はφPVLとほぼ完全に一致していた。これら3つのPVL変換ファージ/プロファージ、及びφ11の部分配列の比較した結果、これらのファージのゲノムが、組みかえ、調節と複製、バッケージングと頭部、尾部形成、溶菌の各機能モジュールが、それらの境界に位置するjunction部位で組み変わった、キメラ構造をとっていることが明らかになった。Junction部位の塩基配列は3者間で良く保存されており、これらがファージゲノムの再編成に関与していると推定された。 2.LukF成分の機能領域の解析 LukFのホスファチジルコリン(PC)との結合に重要な残基としてTrp177及びArg198を同定した。さらに、これら2残基間の残基をアラニンに置換する(アラニンスキャン)を行い、上記2残基以外にいくつかの残基が関与している可能性を示唆した。
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