研究概要 |
アクチンと40-70%程度の相同性を示すことからアクチン関連タンパク質(Actin-Releted Protein:ARP)と呼ばれる一群のタンパク質が広く真核生物に存在しており、アクチンとARPは同じ祖先分子から進化したアクチンファミリーを形成している。最近、アクチンファミリーのいくつかのグループが核内で機能することが明らかにされた。これらのアクチンファミリータンパク質は核内で複合体を形成してクロマチンと相互作用し、クロマチンリモデリング、ヒストンアセチル化、ヘテロクロマチン形成に関与することが示唆されている。研究代表者らはAct3p/ARP4を核に局在する最初のアクチンファミリータンパク質として報告し、Act3p/ARP4がヒストンと相互作用して、遺伝子発現およびクロマチン構造の構築・調節に関与することを示した[Harata et al., Mol. Biol. Cell, 10, 2595-2605(1999)]。申請者らはさらにヒトでAct3p/ARP4のホモログhArpNα、βを見出し、hArpNαが脳で特異的に発現していることを示した[Harata et al., 63, 917-923(1999)]。研究代表者らは、ATP存在下でAct3p/ARP4複合体が不安定化することを見い出した(Harata et al., 投稿準備中)。Act3p/ARP4はATP結合能、ATPase活性を有していることから、自身のATPase活性によるATP結合型からADP結合型への変換(ATP-ADP変換)により分子構造を変化させ、タンパク質複合体中でGTP結合タンパク質のような「分子スイッチ」として機能することが予想された。
|