根粒菌はマメ科植物に根粒を形成させ、その宿主細胞内で共生窒素固定を行う。アルファルファ根粒菌Sinorhizobium melilotiからクローン化した2つのrpoH(大腸菌熱ショック・シグマ因子σ^<32>遺伝子)rpoHI、rpoHII相同遺伝子の機能解析として、本年度は遺伝子破壊の影響や遺伝子産物の発現パターンに関する解析を行った。rpoHII遺伝子は、その破壊が増殖の温度感受性に及ぼす影響は微妙であったが、温度上昇後10分で合成速度が最大となる一群ショック蛋白質(hsp)の発現誘導に対し、必須の役割を有していることが判明した。更に、宿主植物における共生窒素固定にも必須であり、遺伝子破壊株を接種した植物には無効根粒の形成が観察された。一方rpoHI遺伝子については、その遺伝子単独の破壊で影響は全く観察されなかった。しかし、rpoHIrpoHII二重破壊はhspの発現誘導に対しrpoHII単独破壊より大きな影響が観察された。増殖期の細胞内におけるrpoHI、rpoHII及びsigA(主要シグマ因子)各遺伝子産物の定量の結果、RpoHIIはSigAと同様のレベル、RpoHIはその約1/10であった。また、RpoHIレベルが熱ショックにより上昇するのに対し、RpoHIIは熱ショック下や共生状態(バクテロイド)においてもほぼ一定のレベルを示した。
|