1 分裂酵母の高浸透圧感受性変異株の総合的取得とその解析 分裂酵母における高浸透圧環境への適応機構を解析する目的で、新規な高浸透圧感受性変異株(hos変異)を複数取得した。本年度はそのうちの一つ、hos3変異について遺伝子の同定と、機能解析をおこなった。hos3^+遺伝子は94アミノ酸からなる新規タンパク質をコードしていた。hos3変異株を非許容条件(高浸透圧条件)にさらすと、隔壁を持つ細胞が顕著に蓄積した。この現象は野生株ならびに他の高浸透圧感受性変異株では認められず、hos3変異に特徴的であった。hos3変異株が示す高浸透圧感受性ならびに高浸透圧下での隔壁細胞の蓄積は、有糸分裂の制御への関与が示唆されているDsk1キナーゼ遺伝子の高発現によって相補されることも明らかとなった。 2 浸透圧変化に応答して誘導・抑制される遺伝子群の検索とその機能解析 プロモーター検索ベクターを利用して、分裂酵母から塩ストレスに特異的に応答して発現誘導する遺伝子(cta3^+)を取得した。cta3^+遺伝子はP型ATPaseをコードし、その発現は多面的なストレスシグナルの情報伝達に関与することが示されているWis1(MAPKK)-Sty1(MAPK)-Atf1(bZIP)からなるMAPキナーゼカスケードの支配下にあった。cta3^+遺伝子の塩ストレスによる発現を容易にモニターできる系を開発し、塩ストレスシグナルの感知機構に関する遺伝学的な解析を行う基盤が整った。
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