研究概要 |
多糖リアーゼは、一般に多糖分子中のウロン酸を認識し、β脱離反応を触媒する。多糖(アルギン酸、ゲラン、キサンタン)に作用するリアーゼの構造を解明し、多糖リアーゼ反応における構造的一般則を確立するため、各リアーゼについて以下の知見を得た。【アルギン酸リアーゼ】Sphingomonas sp. A1(A1株)の3種類のエンド型アルギン酸リアーゼ(A1-I,A1-II,A1-III)について、各酵素の大腸菌での大量発現、精製系を確立した。分解能1.8ÅでのX線結晶構造解析により、A1-IIIはαヘリックスから成る新規なバレル構造(α_6/α_5)を形成しており、その中にアルギン酸と相互作用するクレフトを有していた。硫安とポリエチレングリコールを用いてA1-IとA1-IIの結晶を調製し、予備的なX線回折データを収集した。アルギン酸にエキソ型で作用するA1株細胞質局在性オリゴアルギン酸リアーゼ(OAL)の酵素及び遺伝子を取得した。現在、OALの大量発現系を構築し、結晶化条件を探索している。【ゲランリアーゼ】Bacillus sp. GL1(GL1株)は、細菌多糖ゲラン[ (Glc-GlcA-Glc-Rha)n]を菌体外からのエキソ型ゲランリアーゼで4糖にまで低分子化する。ゲランリアーゼは、263kDaの前駆体から翻訳後プロセッシングにより130kDaの成熟体に変換される。ウェスタン解析により、ゲランリアーゼは前駆体のまま菌体外に分泌され、プロセスを受けることが示された。成熟体のC末端分析によりプロセス部位を決定し、前駆体のN末端半分子が成熟体になることを明らかにした。現在、成熟体の大量発現系を構築中である。【キサンタンリアーゼ】GL1株は細菌多糖キサンタンの分岐鎖に作用するキサンタンリアーゼを菌体外に産生する。キサンタンリアーゼ遺伝子をクローニングした結果、その1次構造は多糖リアーゼの一種であるヒアルロン酸リアーゼと相同性を示した。現在、大量発現系を構築中である。
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