本研究では、ダイズ貯蔵タンパク質コングリシニンの液胞へのターゲティングシグナルの特定とシグナル認識機構の究明を目的とする。今年度は、コングリシニンのα'サブユニットの変異型をモデル植物(アラビドプシス)で発現させ、それらの種子細胞中での局在性を免疫化学的に調べることにより、シグナルの存在領域の同定を試みた。 1.形質転換体の作成と発現タンパク質の分子集合能 野生型及びプロ領域、エクステンション領域、プロ領域及びエクステンション領域、C末端6残基をそれぞれ欠失させたα'サブユニットと糖鎖欠損させたα'サブユニットの遺伝子をアラビドプシスに導入し、薬剤選抜によりすべてのコンストラクトにおいて形質転換体を得ることに成功した。それらの完熟種子から抽出液を用いてショ糖密度勾配遠心分離とそれに引き続くウエスタンブロッティングを行うことにより、全ての発現タンパク質がアラビドプシス種子中で正しく分子集合していることを示した。 2.ターゲティングシグナルの存在領域の同定 発現タンパク質が種子中でタンパク質貯蔵液胞で輸送されているかを調べるために、抗α'抗体を用いたアラビドプシス完熟種子の免疫電子顕微鏡観察を行った。その結果、全ての変異型α'サブユニットが野生型と同様にタンパク質貯蔵液胞由来のプロテインボディーに局在していることを確認した。このことから、α'サブユニットの液胞輸送シグナルは、コア領域に存在しているということが明らかとなった。
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