研究概要 |
高尿酸血症の予防には食餌由来のプリンヌクレオシドを低減することが有効であるとされている。本研究では、酵素を利用して食品中のプリン含量を低減し、高尿酸血症の予防に有効な「低プリン食品」を開発することを目的とした。低プリン食品開発の端緒として、プリン含量が高い食品であるビールをモデルに、「低プリンビール」製造プロセスの構築を試みた。これは、原料である麦汁中のプリンヌクレオシドをプリンヌクレオシダーゼにより酵母の資化しやすいプリン塩基へと変換し、発酵中の酵母の代謝能力を利用してプリン含量を下げるものである。プリンヌクレオシダーゼは麦汁の糖化工程への添加を想定し、低pH、高温条件に耐性である酵素が要求されたため、この要件に見合うプリンヌクレオシダーゼを広く微生物界に探索した。その結果、Ochrobactrum、Flavobacterium、Serratia属のバクテリア、Saccharomyces、Pichia、Sporobolomyces属の酵母、Aspergillus属糸状菌に高いプリンヌクレオシダーゼ活性を見いだした。また、Aspergillus属糸状菌においては、菌体外にも有為な活性が存在することが見いだされた。このうち特に高い活性を示したOchrobactrum anthropi、Aspergillus niger、A.terreusの菌体内活性、およびA.terreusの菌体外活性について詳細を検討した。O.anthropiの酵素はアデノシン、イノシンに良く作用し、至適反応条件は、pH5〜6、50℃であった。A.niger,A.terreusの菌体内および菌体外酵素は、イノシンに良く作用し、至適反応条件は、pH3〜4、50〜60℃であった。また、A.terreusの菌体内酵素はpH4.5、60℃、1時間の処理に対して安定であった。
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