(1)分子進化工学的なフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)の機能改変 FAODは私たちが糸状菌に見いだした糖尿病臨床診断用酵素として有用な酵素である。Aspergillus terreus GP1株由来FAODのcDNAを用いて、分子進化工学的な機能改変の手法を確立した。まず、大腸菌形質転換体のFAOD活性をプレート上で簡便に検出する手法を開発した。また、FAODcDNAに対してのDNAシャフリング、エラーPCRなどの適用を検討し、効率的な変異の導入法を確立した。確立した手法を使って、今後目的酵素の創成を試みる。 (2)分裂酵母のFAOD様遺伝子(FLP)の解析 FAODの生理学的役割を解明することを目的として、分裂酵母において最近見出されたFLP遺伝子の解析を行った。本遺伝子をクローニングし、大腸菌で発現させたところ、FLP遺伝子物産はFAOD活性持たなかったが、顕著なピペコリン酸オキシダーゼ(POX)活性を有していた。ほ乳類のPOXはペルオキシソームに局在し、生体内で重要な役割を果たしている酵素であるが、これまでにその一次構造に関する報告はなかった。FAODはこれまでにサルコシンオキシダーゼと相同性を示すことが分かっていたが、POXと進化的により近い位置にあることが分かった。
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