研究概要 |
1、脂質からの短鎖アルデヒド生成の生化学的解析系の確立 短鎖アルデヒド生成は植物組織の傷害により急速に、しかも大量に進行する。そこで、シロイヌナズナ葉に傷を与え、その前後の短鎖アルデヒド生成と脂質分子種組成変化をGC,HPLCにより分析した。その結果、アルデヒドの生成は傷害後数秒以内に開始し、その後5分間で最大となることを明らかにした。その時、脂質中のリノレン酸、ヘキサデカトリエン酸が急速に減少することを見い出し、これらの脂肪酸が基質となっていることを実証した。ついで、アルデヒド生成前後の脂質種の分析から、これら減少する脂質酸が葉緑体局在型糖脂質のモノガラクトシルジアシルグリセロール由来であることを明かとした。シロイヌナズナゲノムプロジェクトより公開されたデータを解析することにより、この糖脂質特異的加水分解を担うと考えられる遺伝子を見い出し、そのクローニングにも成功した。 2、シロイヌナズナ変異体のスクリーニング アルデヒド生成欠損変異体の効果的なスクリーニング系として、2,4-dinitrophenylhydrazineをコートしたシリカゲルを用いる固相抽出法を開発し、これまでに千種以上の変異体をスクリーニングした。その結果、アルデヒド生成欠損体としてこれまでに2種のラインall6,all84を得た。これらはいずれもトリコ-ムを有さず、一般にジャスモン酸によって誘導されることが知られているPR遺伝子を常時発現していた。また、短鎖アルデヒドとは異なりアミノ酸から生成されるイソチオシアン酸類を大量に生成した。このことから、これら変異体はアルデヒド生成酵素そのものでなく、これらを統御する遺伝子に変異を持つものであることが考えられた。
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