酸素は生命活動に必須であるが、様々なストレスを引き起こす危険因子でもある。酸素は生体内で反応性の高い活性酸素(O2-、H2O2、・OH等)を生成し、それらが生体分子を攻撃することによって、各種成人病や老化の促進を引き起こすと考えられている。生物は酸素障害から免れるため、活性酸素を消去する仕組みをもち、また活性酸素によって損傷した生体分子を修復する機構を備えている。本研究は、活性酸素に対する防御機構を遺伝生化学的に明らかにするため、遺伝的解析の可能な線虫(Caenorhabditis elegans)を用いて、活性酸素の防御機構に関わる遺伝子を同定することを目標とする。 線虫(C.elegans)を変異源処理し、活性酸素耐性変異体を5種類、高感受性変異体を7種類単離した。全ての変異体について、可視マーカー変異体との標準的な掛け合わせにより、原因遺伝子の座位する染色体を同定した。さらに、同定された染色体上に存在する別の可視マーカー変異体と、掛け合わせを行うことにより、原因遺伝子座を絞り込んだ(3因子交雑)。 このような実験を複数のマーカー変異体を用いて繰り返し、ほぼ全ての変異体に関して原因遺伝子のマッピングを終了した。そこで、絞り込まれた染色体領域に存在するコスミドを変異体に導入する実験を開始した。現在のところ、相補活性を持つコスミドの同定には至っていないが、原因遺伝子の同定は間近であると期待している。
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