研究概要 |
ウイルス外被糖蛋自質の細胞表層出現を指標として糖蛋白質細胞内転送阻害剤の探索を行ってきた。阻害作用の認められたタンシノン類の中でも活性が顕著な、Cryptotanshinone(T1)並びにDihydrotanshinoneI(T2)について解析を行った。水疱性口内炎ウイルス感染BHK細胞を^<35>S-メチオニンンで標識し、VSV-G蛋白質の細胞内転送に及ぼすT1,T2の作用を検討したところ、培地中に放出されるVSV-G蛋白質は対象に比べ減少し、細胞画分への蓄積が認められた。また、細胞画分に蓄積したVSV-G蛋白質の糖鎖はEndo Hに対して耐性であることから、VSV-G蛋白質の細胞内転送をゴルジ以降の過程で阻害してることが示唆された。C_6-NBD-セラミドを用いてスフィンゴ脂質の合成と細胞内転送を解析した。C_6-NBD-セラミドを添加するとC_6-NBD-グルコシルセラミドとC_6-NBD-スフィンゴミエリンに代謝されて、細胞表層へ転送されるが、T1並びにT2存在下ではグルコシルセラミドの培地への放出が顕著に阻害され、細胞内に蓄積した。一方、スフィンゴミエリンの合成及び細胞内転送は阻害されなかった。グルコシルセラミドの合成・細胞内転送に重要な機能を果たしているゴルジの形態に及ぼす作用をNRK並びに人表皮細胞を用いて検討した。T1,T2存在下ではゴルジの形態のフラグメント化が認められた。ゴルジの形態に作用するBFA、ノコダゾールやイリマキノンとは形態に及ぼす作用や、スフィンゴ脂質の合成・細胞内転送に及ぼす作用が異なるため、これら既知の阻害剤とは異なった作用で糖蛋白質と糖脂質の細胞内転送を阻害することが示唆された。また、新たにラディシコールが糖蛋白質の細胞内転送を阻害することを確認した。
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