1、抗腫瘍抗生物質ビセニスタチンの生産菌より微量成分として、マクロラクタム部はビセニスタチンと同一であり、構成糖として中性糖マイカロースを有するビセニスタチンMを新規物質として単離した。マイカロースの絶対立体配置はD体、L体それぞれの誘導体を合成することによってD体であると決定した。またビセニスタチンMの活性試験を行なったところ、in vitroにおいて細胞毒性が完全に失われることから、アミノ糖ビセニサミンがビセニスタチンの抗腫瘍性発現において極めて重要な役割を果たしていることを示すことができた。(発表論文1) 2、アミノ糖ビセニサミンの合成法をさらに進化させ、ケダルシジンクロモフォアのアミノ糖であるケダロサミンの新規合成法を確立した。すなわち、出発原料となる光学活性エポキシアルコールの幾何異性体を用い、イミダートの分子内環化反応による窒素官能基の導入、キラル補助基を用いたジアステレオ選択的アリル化を鍵とした合成ルートである。本合成法は種々のアミノ糖合成に適用可能な柔軟性のあるものであることを示すことができた。(発表論文2) 3、上記で得られた知見をもとにして、ビセニスタチンの活性発現機構を見出すべく、その一次作用点を探るため、各種蛍光標識体を設計合成した。すなわち、アグリコン部を蛍光標識体と置き換えたもの、アミノ糖部の水酸基にエステル化によって導入したもの、アグリコンのアミド窒素に対しアルキル化、薗頭カップリングなどを用いて導入したものという3つのコンセプトに基づき蛍光標識体を合成し、それらの活性試験を検討中である。
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