研究概要 |
老化色素リポフスチン中の蛍光物質生成に、脂質過酸化産物の一つである4-hydroxy-2-nonenal(HNE)によるタンパク質修飾の関与が示唆されている。そこで我々は、HNEとリジンとのモデル反応から得られ、すでにその化学構造が決定されている蛍光物質(2-hydroxy-3-imino-1,2-dihydropyrrole derivative,HIDP)を指標として、タンパク質レベルにおけるHIDPの検出方法の確立を検討した。まず、分析サンプルの調製のため、RibonucleaseAをモデルタンパク質として用い、HNE修飾Ribonuclease Aのアミノ酸レベルへの加水分解を行った。加水分解の方法としては、HIDPが強酸・強アルカリ条件下で不安定であることから、peptidaseとpronase Eによる酵素分解を行った。そしてこの酵素加水分解物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析し、その中からHIDPとクロマトグラフィー的に一致するピークの検索を行った。検出には、蛍光検出器(現有備品)とインテリジェントマルチチャンネル検出器(日本分光・MD-1510T)(平成11年度科学研究費補助金で購入)を使用した。その結果、蛍光検出器による分析ではHIDPと一致するピークが認められたが、ピーク強度が極めて弱かったため、それがHIDPに由来するものであるという確証には至らなかった。さらにインテリジェントマルチチャンネル検出器による分析においても、HIDPのピークが検出される溶出時間の附近に、他の酵素加水分解による生成物の多くのピークが重なってしまった。そのため、蛍光検出器で検出されたピークの溶出時間におけるよい紫外可視スペクトルを得ることが困難であったため、この場合もHIDP生成の確証には至らなかった。
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