スパイクHタンパク質とリポ多糖(LPS)の相互作用解析 LPSとの結合によりHタンパク質の蛍光強度が増大することが判った。ウイルスの宿主である大腸菌C株のLPSとの結合の解離定数K_dは、蛍光滴定により7.02±0.37μMと計算された。K_dの温度依存症から、この結合はエンタルピー的には不利(ΔH^0=+23.7kJ/mol)であるものの大きなエントロピー変化(TΔS^0=-52.8kJ/mol)を伴うエントロピー駆動型であることが判明した。また、樹脂プレートを用いる酵素リンク法によって、種々のエンテロバクテリア由来のLPSとスパイクHタンパク質の結合を比較した結果、大腸菌C株のLPSの結合力を100%とすると、同じく宿主であるサルモネラRa株では、53%と強いが、非宿主である大腸菌F583株や大腸菌O111株のLPSの結合力は、約5%程であり、弱いことが判った。 スパイクGタンパクの遺伝子工学的な調整 スパイクGタンパク質の遺伝子領域をウイルスRF DNAを鋳型としたPCRで増幅した。増幅断片をキアゲン社のpQE30にクローニングして、発現ベクターpQE-Gを構築することが出来た。pQE-Gを擁する大腸菌JM109株にIPTGにより発現誘導を掛けると、目的のヒスチジンタグ融合Gタンパク質(HisG)が大量に発現した。Ni-NTAアガロースによるアフィニティークロマトグラフィー、次いで、CMセルロファインによる陽イオン交換クロマトグラフィーにより、タンパク質として単一になるまで精製することが出来た。 レセプターLPSの限定分解によるLPS誘導体の調整と構造確認 大腸菌C株由来のLPSを無水ヒドラジンや4M NaOHで処理して、O-アシル結合した脂肪酸を除去した誘導体および全てのアシル基を欠損した誘導体を調整し、ゲル濾過により精製した。ウイルス粒子と相互作用させたところ、完全なLPSに備わっているウイルスを不活化する能力が無いことが確かめられ、脂肪酸が除去されたことが判った。
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