本研究の目的は、活性酸素に対する生体の酸化ストレス防御系を活性化する食品成分を検索し、この食品成分によって誘導される新しい酸化ストレス防御系を明らかにすることである。このような作用をもつ可能性がある食品成分として、今回はまず大豆タンパク質をえらび、酸化ストレス負荷動物が摂取した際の効果を検討した。成長期のWistar系雄ラットを3群に分け、1)20%カゼイン食、2)20%カゼイン食+0.25%パラコート添加食、3)20%分離大豆タンパク質食+0.25%パラコート添加食をそれぞれ摂取させ、パラコートの経口投与による酸化ストレス負荷を大豆タンパク質がどれだけ軽減するかを検討した。その結果、パラコート摂取により引き起こされる肺の肥大、体重減少といった症状が大豆タンパク質の摂取により有意に軽減されることが明らかとなった。このとき肝臓における各種抗酸化酵素活性、脂質過酸化度等の測定を行ったが、有意な変動は観察されなかった。 これらの結果から、パラコートストレス負荷状態で大豆タンパク質を摂取したラットにおいては、何らかの生体内抗酸化系が活性化されている可能性があると考え、このラット肝臓よりRNAを抽出し、パラコートストレス負荷下でカゼイン食を摂取したコントロールに対してサブトラクションライブラリーを作成した。ライブラリーの作成には、PCR-Select cDNA Subtraction Kit(Clontech社)を用いた。作成したcDNAにおけるsubtraction効率をいくつかの遺伝子について検討した結果、比較的高い効率が得られたと考えられた。このcDNAからライブラリーを作成し、出芽酵母に導入後、酸化ストレス下で生育可能となることを指標として機能発現スクリーニングする予定である。
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