高分子ゲルでは、ゾルーゲル転移点近傍で、動的弾性率及び相関距離が、スケーリング則で記述されることが知られている。アガロースゲルの相関距離は濃度が高くなるにつれて小さくなり、濃度の転移点からの隔たりによって良好にスケールされた。得られた臨界指数は1.53となった。動的弾性率の濃度依存性についても濃度により良好にスケールされ、その臨界指数は2.31であった。弾性率の臨界指数tは、相関距離の臨界指数νと空間次元dのみならず弾性機構にも依存する。高分子鎖が固くたわみにくい場合(スカラー弾性)にはt=1+ν(d-2)と表現される。高分子鎖がやわらかい場合(ベクトル弾性)にはt=dν+1となり、網目中を高分子クラスターがブラウン運動している場合には、t=dνと記述される。アガロースゲルはスカラー弾性に従うことから、νの実験値からtを計算すると2.53となり実験値と近い値となった。以上の結果から、動的弾性率の臨界指数tと相関距離の臨界指数νからゲル中の高分子鎖の弾性機構が評価できることが示された。 一方、タンパク質系の食品ゲルについて赤外円二色性スペクトルを測定し、タンパク質のアミド結合に由来するシグナルについて状態変化に対応した変化を観測することができた。これにより、タンパク質の高次構造変化に基づいたスケーリング解析が可能となると思われる。
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