カテコール化合物とタンパク質の反応を検討するため、まずはじめにカテコール化合物としてドーパ、ドーパミン、ジヒドロキシフェニル酢酸を用い、タンパク質との直接的な反応を調べた。カテコール化合物は酸化されて生成するキノン部分がタンパク質のアミノ基やSH基に付加する中間体であると考えられることから、カテコールを酸化する手段としてチロシナーゼおよび過酸化水素-銅イオン系を比較検討した。いずれもカテコール化合物の(キノン生成に由来すると考えられる)褐変化が進行した。この溶液をタンパク質(BSA)に添加し、さらにインキュベーションしてSDS電気泳動を行ったところ、タンパク質のバンドの拡散が認められ、分子上での(断片化や重合ではない)修飾反応が生じていることが明らかとなった。同様にして反応させたカテコール修飾Keyhole limpet hemocyaninをマウスに注射して血清を回収し、抗体の産出をELISAにより検討した。しかしながら、カテコール修飾BSAへの抗体の反応性はわずかながらにしか認められず、この免疫源は抗原性が低いことが明らかとなった。現在はカテコール化合物とグルタチオン/システインを保温反応させて生じる反応物の分析を逆相HPLCを用いて行っており、新規付加生成物と思われるピークを検出している。今後はこのカテコール-アミノ酸付加体を単離同定して、得られた化合物をキャリア-タンパク質に結合させて免疫源とし、モノクローナル抗体の作成を試みる予定である。
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