研究概要 |
湛水ストレス条件下での生育が観察されている熱帯性樹種Melaleuca cajuputi,Azadirachta excelsa,Syzygium grandis,Paraserianthes falcatariaの種子をタイ南部より入手した。実生苗を環境制御温室内で成育させ,根系すべてを水中に没させる処理区と半分まで没させる処理区を設け,まったくストレスを与えない対照区との成長反応を比べた。3樹種とも湛水処理により樹高成長が抑制されたが,部位別の乾重を測定したところ,A.excelsaは湛水条件下でより少ない根で地上部の成長を維持していることが示された。半湛水区の成長を見ると,湛水部分の根系の発達は抑えられるが,湛水面より上部で根系の発達が捉され,対照区と同程度かそれ以上の地上部成長を可能にしていた。 A,excelsaとS.grandisについては葉の気孔コンダクタンスを測定したところ,湛水区では根からの水分供給が妨げられていることが示唆された。 根のエネルギー状態を調べたところ,3樹種とも湛水後1日でエネルギー充足率が低下し,1週間経っても回復しなかった。根のエネルギー状態の悪化が養水分の吸収を妨げる一因となっていることを示唆している。また湛水区の水面付近に新たな根を発達させていることが観察された。現在,これらの根のエネルギー状態を測定すると共に,その解剖学的特徴を調べている。 S.grandisの近縁種で,より湛水耐性の高いと思われる樹種の種子を入手できたので,これらについても来年度に同様の試験をおこない,湛水ストレスに対する耐性機構を明らかにしていく。
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