火砕流堆積物に覆われた雲仙普賢岳流域において試験流域を設け、雨量、浸透能、土壌水分量、表面流出量、土石流・泥流などの諸水文量を観測した。その結果、火砕流堆積物上における土石流・泥流発生の降雨条件が経時的に上昇してきていること、また、土石流・泥流の発生頻度、規模(ピーク流量、総流出量、生産土砂量、流出土砂量)などが経時的に減少していくことが明らかになった。 土石流・泥流の発生頻度、規模などが経時的に減少していく理由を明らかにするためには、試験流域内の侵食過程を把握する必要がある。そこで空中写真を用いて火山噴火後から現在までの試験流域内における侵食過程について解析を行った。その結果、土石流・泥流の発生頻度、規模などが経時的に減少することに、リル・ガリーの発達過程(リル・ガリー侵食域)が大きく寄与していることが明らかになった。 空中写真判読および野外観測結果より、雲仙普賢岳の火山活動後、土石流・泥流の発生頻度、規模などが経時的に減少する理由として、火砕流山腹斜面の最表層を覆っていた細粒の火砕物が侵食を受け、地表が粗粒化し、浸透能や表面流の発生条件が緩和され、ガリ侵食や土石流が発生しにくくなっていることが考えられる。しかし、上流域の山腹にはまだ多量の火砕流堆積物が存在し、今後も雨(日雨量200mm以上、時間雨量50mm以上)によっては多量の土砂が生産され流出する危険性がある。
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