研究概要 |
メヒルギ枝枯性病害の病原である子嚢菌Cryphonectria sp.と,その近縁種C.nitschkeiの12菌株とを用いて,菌株間での病原性および菌類学的性質の違いについて検討した。その結果、メヒルギ枝枯れ性病害の病原菌とC.nitschkeiの間には、明確な相違が認められたことから、本病をCryphonectria属の新種の菌類による新病害であると判断した。そこで、本病をメヒルギ枝枯れ病と命名して発表する予定である。 メヒルギ枝枯れ病の罹病林分において、健全林分と比較して種子生産が非常に低下している現象が認められたので、沖縄島のメヒルギ林において実態調査を行い、本病の罹病率と、種子生産量、病徴進展、環境条件について比較検討した。本病の高い罹病率を示す個体が多く現れる環境条件として、林縁部にあること、満潮時に樹冠が水没しない樹高に達していること、また、河口に近い塩分濃度の影響の高いと考えられる位置にあることの三つが見いだされた。さらに、これらの条件がほぼ同一である場合には、土壌侵食が著しい条件下で高い発病率を示すことがわかった。 本病の初期病徴の発現と、病徴進展にかんして、病患部の組織学的特徴についても検討されたが、当年枝に現れる初期病徴が、いかなる条件で主幹にまで拡大するのかについて現在検討中であり、結論は得られていない。 本病病原の、菌株による病原性の変異と、イタジイなどCryphonectria spp.に感受性の宿主に対する寄生性とについては、接種試験が行われ、その経過を観察中であり、来年度に結論が得られる見通しである。また、オヒルギ枯死枝から分離された糸状菌についても病原性の検討を開始した。
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