メヒルギの枝枯れ性病害について、病原が同定され、新種の病原Cryphonectria liukiuensisによるメヒルギ枝枯病との病名を提唱した。 本病病原は、Cryphonectria nitschkeiと形態学的に類似するが、分生子の大きさと、相互の宿主植物に対する病原性において性質が異なっていた。また、人工海水を添加した培養基上での菌叢の発育に大きく異なる特性が認められた。即ち、C.liukiuensisにおいては、Herbst人工海水(0.6M NaClに相当する濃度)または同一濃度のNaCl溶液を添加した培地上で、分生子の発芽と菌糸の初期伸長がほとんど抑制されなかった。さらに、菌糸の成長においては、MA培地そのものよりも、30〜70%に希釈した人工海水を添加したMA培地上においてその成長が促進された。また、一部の菌株では、100%人工海水の添加によっても菌糸の成長は抑制されなかった。一方、同一濃度のNaCl添加区では菌糸の成長は著しく抑制された。 このような、塩分に対する特性は、実態調査と比較しても、病患部の分布などの実態と矛盾しない。 このように、本菌において、分生子の発芽と菌糸の成長とは、互いに異なる機構で塩分濃度・組成の影響を受けるものの、マングローブ環境下において、本病の感染・発病・蔓延に海水の作用が抑制的に働かないことが示唆された。一方、本病の流行に直接関与する顕著な環境ストレス因子は、見いだされなかった。 また、オヒルギについて、顕著な分生子柄束を形成する寄生菌が琉球列島に広く分布することが明らかにされた。本菌の同定と病原性の検討が進められている。
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