1.菌株の収集 北海道内において中毒例の報告されている種、またはその近縁種を採取し、形態観察による種の同定、標本作製および菌株分離を行った。採取したキノコの系統数は以下の通りである。 ベニタケ属(6種15系統)、チチタケ属(5種18系統)、テングタケ属(3種15系統)、カヤタケ属(3種11系統)、クリタケ属(3種15系統)、スギタケ属(3種9系統)、アセタケ属(2種5系統)、イッポンシメジ属(3種12系統)、イグチ属(2種6系統)、カラカサタケ属(2種4系統)、ヌメリイグチ属(4種12系統)、モエギタケ属(2種5系統)、フウセンタケ属(4種8系統)、サマツモドキ属(2種7系統)、フクロタケ属(3種6系統)、ウラベニガサ属(3種8系統)、以上50種156系統。 2.分子マーカーの検索 上記において採取したキノコ種を、属内において有毒種と可食(または無毒)種とを識別することを目的として、PCR用テンプレートDNAの抽出条件および、PCR法によるリボソームRNA遺伝子のIGS領域の増幅条件を検討した。テンプレートDNAは、生子実体、アルコール浸漬標本および凍結乾燥標本のいずれからもTEバッファー中で100℃、10分間の煮沸抽出処理により調製可能であることが明らかとなった。得られたテンプレートを用いてIGS領域の増幅を行い、500〜700ベースの増幅物を得たが、非特異的なバンドの出現が幾つかの系統に認められた。IGS領域長には特に明確な種特異性は認められなかった。更に、IGS領域PCR増幅物に対して、DdeI、AluI等の制限酵素を用いてRFLPパターンを取得し、種間比較を行ったが、供試菌株群については単独酵素処理による有毒種の識別は困難であった。属毎に供試菌株を増やして、生物学的種との対応も考慮しつつ、更に検討してゆく必要性があると考えられた。
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