セルロースを塩化リチウム・ジメチルアセトアミド混合溶媒(LiCl・DMAc)に溶解させ、その固体構造が溶解性に及ぼす影響および得られた溶液の粘弾性挙動について検討した。試料としては、植物由来のセルロース(綿、木材パルプ)だけではなく、バクテリアセルロースおよびホヤセルロースも用いた。バクテリアセルロースのLiCl・DMAc溶液は、ある濃度以上で液晶を形成した。また、ホヤセルロースは上記溶媒に溶解しなかった。 X線回折測定より、セルロースの固体構造と溶解性について検討したところ、セルロースの結晶化度は溶解性に影響を及ぼさないことが判明した。小角X線散乱測定および固体NMR測定より、セルロースの溶解性は結晶よりも大きなオーダーの構造に起因していることが示唆された。 セルロース溶液の粘弾性測定から得られた零剪断粘度を溶液濃度に対して両対数プロットすると、直線関係が得られた。準希薄領域において、植物由来のセルロース溶液とバクテリアセルロース溶液とで上述の直線の傾きが異なった。すなわち、植物由来のセルロース溶液では零剪断粘度は濃度の4乗に比例し、一方バクテリアセルロース溶液においては零剪断粘度は濃度の3乗に比例した。このことは、植物由来のセルロースは溶液中で比較的屈曲性高分子に近い状態で分散しており、またバクテリアセルロースは棒状に近い状態で分散していることを示している。植物由来のセルロースとバクテリアセルロースの溶液挙動の違いは、両者の化学構造の違いによるものではないことが確認された。 ある溶媒がホヤセルロースを溶解させることを新たに発見した。
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